2019.02.12
「ドラマデザイン社舞台シナリオ大賞」はストーリー賞(一次審査)を通過した8人の皆さんが1ヶ月の期限で執筆した脚本が、3人の審査員(山本和夫・水野宗徳・千葉美鈴)によって審査されました。その結果、木江恭さんの「レモンゼリーのプールで泳ぐ」が大賞(賞金20万円)に選ばれました。
■ストーリー賞入選の8本
「花子ワン・ツー・スリー」 エダカヨ
「レモンゼリーのプールで泳ぐ」 木江恭
「パンデミック・ハート」 きりん後
「炎の渦」 鳥澤亜也乃
「No title」 長曽佳穂
「白黒アリス」 永野桜
「オペラ座の教室」 廣見結菜
「夢中の宇宙」 水元久美子
(五十音順)
審査の講評ですが、概してストーリー賞段階でイメージされたストーリーの面白さが、シナリオになると消失してしまった作品が多かった、というのが審査員の共通した意見です。全体にセリフの応酬に頼る傾向が見られ、物語の軸が読めない脚本が大半でした。比較的完成度の高かったのは「炎の渦」でしたが、世界観があまりに暗く、10代女子だけで演じる作品として上演に適さないと判断しました。長曽さん、永野さん、廣見さん、3人の高校生の作品は、10代ならでは新鮮なセリフが評価されたものの、いずれも物語の展開が緩慢で、テーマの掘り下げが弱かったのが残念でした。
大賞を獲得した「レモンゼリーのプールで泳ぐ」は違法なガールズバーで働く、問題を抱えた少女たちの生態を描いています。設定の面白さや狙いは秀逸で、セリフと展開のバランスも均衡が取れていました。しかし「炎の渦」ほどではないにしろ世界観が暗く、観終わった客が暗い気分で劇場を出なければならないようなテーストで、上演には大幅なリライトが必要となります。
審査員の全員が「レモンゼリーのプールで泳ぐ」を圧倒的に高評価したということではなく、それぞれの作家の可能性を惜しみながらも、「レモンゼリー…」が、もっとも上演に適しているという点で一致した次第です。