2023.12.08
1990年代まで、アジアで圧倒的な存在だった日本のテレビドラマが、今では韓国に遠く抜かれ、台湾や中国に並ばれ、タイにも迫られています。国内での人気も低迷し、放送翌日に話題になることもほとんどありません。素晴らしい作品もありますが、総じて「面白くない」「リアリティがない」「うすっぺらい」という声が多いのが現状です。テレビ局の製作費が削減され、映像や美術に劣ることが指摘されることもありますが、やはり問題の本質はストーリーにあるでしょう。「話がつまらない」これに尽きます。今、私たちは視聴者の厳しい指摘に真摯に耳を傾けねばなりません。
「日本のドラマは、シナリオがつまらない」
その要因をいくつか挙げてみましょう。
① 物語の予測可能性と類型化
第1話を見て視聴をやめる人が大半。予測可能な展開や似通ったプロットが多く、新しいアイデアや斬新なアプローチが不足している。
② キャラクターの掘り下げ不足
人物の心情や成長に焦点を当てず、ステレオタイプなキャラクターが多いのも問題。キャラクターの魅力や複雑さが不足している。
③ リアリティとの欠如
描かれている状況や人間関係に共感できない。アニメとは異なり、俳優が演じる実写ドラマでは、現実味がない場面や状況に違和感が生じ「リアリティがない」「あり得ない」との声が上がる。
④ テーマ性の欠如
ドラマが何を描くかというテーマ性やメッセージが不足。現代人が直面している様々な社会問題や内面の変化を物語に取り入れておらず、視聴後に深く考えさせるような魅力があるものが少ない。
⑤ 物語の構成やシーンの描写が脆弱
何を見せるかが絞れていないため、冗長なシーンやテーマと関係のないシーンが多い。またシーンを印象的な芝居で描かず、安易にナレーションでの説明を多用するケースが常態化し、俳優の魅力的な演技を引き出せていない。
なぜ、こうしたシナリオが増えているのか…犯人捜しをしても始まりません。2010年代にネット配信が始まり、世界のドラマが流入するまで、日本のテレビドラマは「これしか見るものがない」というガラパゴス状態に甘んじていました。積み重なる成功体験に寄りかかり、海外で起きている変化に「日本はまた違う文化だから…」と背を向けてきました。その間に韓国は、世界をマーケットとするアメリカの演出や脚本を学び、世界でヒットするコンテンツを生み出しています。中国、台湾、タイも魅力的なドラマを数多く、発信するようになりました。
いつしか頼みとしてきた国内の視聴者も、Netflixなどの普及により目が肥え、自国のドラマにそっぽを向き、海外ドラマに夢中です。日本のテレビドラマは、もはや国内の視聴者を魅了することさえ出来ないのです。
「世界の潮流など関係ない、憧れている脚本家のようなコアな人々に刺さるドラマを書ければいい」…そうおっしゃる脚本家志望の方に良く出会います。しかし、それではこれから、脚本家の道を拓くのは難しいのではないでしょうか?
なぜなら、ガラパゴス状態を維持してきた放送局がいま、変わり始めているからです。ご存じのように視聴者のテレビ離れのため、業績が下がり続けているテレビ局は、国内の放送収入だけでは明日がないことを痛感し、海外販売(配信)に大きな可能性を見出しています。今後はドラマを作る際に、国内で視聴率を取ること以上に、海外でのヒットを求められるようになります。その時に、選ばれるのはどういう脚本家でしょう?皆さんが憧れているような脚本家の名前はリストに無いと思います。無名でも世界標準の思考で執筆できる脚本家が求められます。
国を越えて共感できるテーマの設定、視聴を継続させる展開と構成、目が離せない魅力的なキャラクター、繰り返し見たい独創的なシーン(演技)、見終わっても耳から離れない含蓄のあるセリフ…映画やドラマをヒットさせるそれらの要素を徹底的に追求し続けてきたのが、100年の歴史を持つアメリカ、ハリウッドのエンタメ産業です。脚本を学ぶものは謙虚に、その知見とノウハウに目を向けるべきです。
2000年のドラマデザイン社設立と同時に創設されたシナリオインキュベーションでは、初期からハリウッドメソッドを教えています。出身者がプロになる確率が高いのは、そのメソッドがしっかり身についているからです。しかし、当時も今も、ハリウッドの構成主義と聞くと、大半の脚本家やプロデューサーは嫌な顔をします。勉強もろくにせず拒否感を示す日本のクリエイターの反応には理解できません。何か神聖なものを汚されたような感じがするのでしょう。まるで、高性能の魚群探知機があるのにそれを拒絶し、海の色と鳥の群れだけで網を入れる古代の漁師のようです。もちろん、メソッドは全ての解を提供するわけではありません。それどころか、メソッドを振りかざすだけの創造性がない中二病的なアプローチでは、陳腐で硬直した作品しか生まれません。
豊かなイマジネーションがあればこそ、メソッドは役立ちます。海の微妙な変化を察知する直感と、科学的な魚群探知機の両方を使えばいいのです。
悲観的になる必要はありません。世界を席巻する日本のアニメが示すように、日本の物語の魅力や特異性は他に類がないのです。底力は無限にあります。ただ、テレビドラマ界は「世界で戦う」ことに焦点を当てた人材育成がなされてこなかっただけなのです。
シナリオアカデミアではハリウッドメソッドを中心に、人と物語の根源的な関係を理解するため文化人類学やCGユングの深層心理学などを取り入れています。文化圏を問わず人間を引きつけるシナリオ作成法について、論理的に理解できるカリキュラムを組み、講義をしています。
また同時に、受講生の独創性を引き出すため、毎回、プロットやショートシナリオの提出を求め、講師であるプロデューサーとセッションしてブラッシュアップしていきます。16回の講座が終了した時、あなたは1本の満足のいく長編シナリオと、浮かんできたアイデアや物語を、迷わずシナリオ化出来る強力なツールを手にしているでしょう。
■講座の特徴■ プロデューサーが教えるシナリオ講座
【なぜプロデューサーが教えるのか】
プロの脚本家になりたくても、ドラマの製作責任者であるプロデューサーの評価が得られなければ、デビューは出来ません。登竜門である多くのシナリオコンクールを査読するのもプロデューサーです。なぜなら、ドラマや映画をヒットさせる責務のあるプロデューサーのいちばん大切な仕事は「当たるシナリオ」を作ることだからです。そのために脚本家の資質を見極め、「どうやったら良い脚本を書いてもらえるか」というアドバイスやリーディングに、プロデューサーは才能と経験のすべてをかけています。脚本家が行き詰った時に、どこに問題があるか的確に指摘し、解決法を提示できるか、プロデューサーは日々ノウハウを蓄積しています。新人の小説家や漫画家にとって、どんな編集者と出会うかがキャリアを決めるように、脚本家にとってプロデューサーは最初に立ちはだかる壁であると同時に、壁の乗り越え方を指南してくれるメンター(導き手)でもあるのです。 シナリオの書き方をプロの脚本家に学ぶのも有用なことですが、まったく視点を変えた本コースのカリキュラムは、本気でプロを目指すあなたに新たな光明を与えるでしょう。
【講師紹介】
山本和夫■ドラマデザイン社代表取締役プロデューサー/シナリオアカデミア代表/シナリオインキュベーション主宰。20年間の読売テレビ在籍時代、プロデューサーとして新人脚本家の抜擢し、多数の連続ドラマのヒットさせた→【作品履歴】 その経験に基づき、2000年のドラマデザイン社設立と同時にシナリオインキュベーション(以降SI)を開設。 テレビドラマを制作する傍ら2004~2019年までデジタルハリウッド大学院教授を務めた稀有なキャリアを持ち主。 その知見を活かして指導したSIは多くの第一線の脚本家を輩出している。
池田禎子■ 株式会社チョコレートボックス代表取締役プロデューサー 2022年までザ・ワークスのプロデューサーとして数々のヒットドラマをプロデュース。 日本テレビ「初恋の悪魔」/テレビ朝日「ドクターX」シリーズ 「リーガルV」「遺産争続」「聖なる怪物たち」「犬を飼うということ ~スカイと我が家の180日~ 」 他プロデュース作品多数
■カリキュラム■
コース(4ヶ月16回)では、前半8回でハリウッドメソッドを中心に学び、後半では5人前後の小チームに分け、担当プロデューサーの指導の下、オリジナル企画を作り、1時間の長編シナリオを書き上げます。大学に例えれば前半は科目履修、後半はゼミの卒論制作にあたります。
日々、多くのプロの脚本家と脚本を制作しているプロデューサーからのアドバイスは、通常のシナリオスクールでは得られない貴重な学びなります。完成したシナリオは、自身の作品として各コンクール等に出品できます。
【講座終了後】
今期から、シナリオアカデミア全講座を終了され課題シナリオを完成させた方全員に、シナリオインキュベーションのベースメンバーに入会する資格を付与します。ドラマデザイン社は22年間の歴史があるシナリオインキュベーションで、新人ライターにメソッドを教え続けてきました。そして局や製作会社のプロデューサーと共に企画開発することにより、自然にマッチングが行われ、多くの第一線で活躍する脚本家を生み出しています。在籍中のメンバーには海外配信大手のパイロットシナリオを執筆し、本国の審査を受けている者もいます。4ヶ月の講座だけは無く、長期間に渡ってサポートすることにより、プロの脚本家を輩出していきます。
■全カリキュラム■(予定)
【前半】 基礎講義 (1限120分)
担当P:山本和夫
1限目 物語の原理 「なぜ人は物語を見るか」神話と心理学
2限目 ハリウッドメソッド①三幕構成を習得 / 創作実習
3限目 〃 ②テーマの重要性と設定法/ 創作実習
4限目 〃 ③目を離せないキャラクターの作り方/ 創作実習
5限目 〃 ④独創的なシーンとセリフの作り方/ 創作実習
6限目 〃 ⑤ジャンルの特性を生かす/創作実習
7限目 題材の選び方。社会状況の反映法/ 創作実習
8限目 プロデューサーが求める 企画書・プロットの作成法 池田禎子P/ 創作実習
(講義内容に組替え・変更あり。創作実習は前週の課題の評価)
【後半】 オリジナル脚本作成ゼミ
9限目 脚本執筆演習(山本・池田)
10限目 〃
11限目 〃
12限目 〃
13限目 〃
14限目 〃
15限目 〃
16限目 終了発表会 特別講師による最優秀賞の発表
特別講師は局あるいは製作会社Pを予定していますが未定です。
■料金(税込み)
入学金 10,000円
授業料 20,000円/月×4か月 80,000円
お支払い方法のご案内
① 一括【割引あり】 ご一括でご入金の場合は、入学金を免除といたしますので、80,000円を期限1月15日までにお振込みください。
② 前半(8回)・後半(8回)の2回振込
前半受講料40,000円と入学金10,000円の計50,000円を期限までにお振込み下さい。後半のご入金40,000円は2月末にご案内いたします。前半のみ受講は可能ですが、後半のみの受講は出来ません。
③ 月単位でのご入金
初月分(4回)20,000円と入学金10,000円の計30,000円を期限迄にお振込み下さい。継続される場合は、その都度ご入金ください。
①~③いずれも途中退講可能ですが、入金済みの入学金・授業料はお戻し致しません。
■開講 1月17日(2024年5月1日までの予定)毎週水曜日 昼14時 OR 夜18時半
■定員 20名(予定)
■講義場所 ドラマデザイン社(溜池山王)地図 リモート受講可
■応募方法 こちらの【メールフォーム】にてお申し込みください。
■審査 メールフォームの中に、簡単なプロット審査の項目があります。この講座があなたにとって有用なものになるかを確認するため、短いプロットをお送りください。
■応募締切 1/9(火)
■説明会 ガイダンスは12/23に終了いたしましたが、ご質問等ありましたら以下にお問い合わせください。ご返信を差し上げます。
【問い合わせ先】株式会社ドラマデザイン社
シナリオアカデミア担当 mail:desk@drama-design.co.jp